「――ほら、見て。」


健人くんと目線を合わせるようにしゃがみ込んだ私は、スマホを取り出してつい1ヶ月ほど前に嘉人くんと一緒に撮ったツーショットを健人くんに見せた。


『嘉人兄ちゃんだ!』

「うん、…信じてくれた?お姉さんのこと。」

『うん!』


最近のカメラ機能がすごい、という話で盛り上がって、ノリで撮った初めての嘉人くんと映った写真を見た健人くんは本当に安心したのか、ようやく笑顔を見せてくれた。


『嘉人兄ちゃんは?どこにいるの?』


スマホをポケットに入れていると、健人くんがキョロキョロと辺りを見渡して、嘉人くんを捜していた。

そう言えば、健人くんに連絡できてないって言ってたっけ…。


「あのね、嘉人くんは仕事で、まだここには来られないんだって。」

『……。』


正直に事の経緯を話せば、健人くんは明らかに悲しそうな顔をする。

大きな瞳に涙を浮かべ始めた健人くんに、慌てた私は安心させるように健人くんの肩に手を置いた。


「だからね、今から嘉人くんの家で、待っていよう?嘉人くん、仕事が終わったら、すぐに帰ってくるって。…健人くんに会えること、すごく楽しみにしてるからって。だから……泣かないで、待っていよう?」

『…うん。』


小さな唇を噛みしめて、小さな手でこぼれそうになる涙を拭う健人くん。

その姿に、心の奥底にあった自分の母性を燻って、この子のために何でもしてあげたいと思った。