『?』

「神田さんのためじゃないよ。……服も、髪形も、メイクも、靴も…全部、嘉人くんのためだもん。」


今度は私が、ギュッと彼の身体を抱きしめた。

これからは、こんな風に前は言い出せなかったことも、言えるようになっていくのかな。


「全部、嘉人くんに可愛いって思ってほしくて、頑張ったの。」


そうだったら、――いいな。

そう思いながら抱きしめた彼を見上げると、彼は幸せそうにくしゃりと笑ってくれる。


『…何だ。――そっか、俺のためか。』

「うん。」


素直に「嬉しい」と口にしてくれる嘉人くんは、前に神田さんが言っていた『あまり自分の気持ちは表に出さない』部分なんて持っていなくて。

これからも、そうやって思ってることを口にしてくれたら、すごくいいなと思った休日の昼下がり。

取れかかったカーディガンのボタンを直しに来たはずなのに、本題を忘れて抱き合う私達。

そんな幸せな時間がずっと続くことを願いながら、私は彼の腕の中でこれ以上ない幸せを噛みしめていたのだった――。



~~Fin~~