「…今更、付き合わないって言うのはナシだよ?」

『当たり前だろ…!もう、離せないから。』


焦ったように腕の力を込めて私を閉じ込める彼に、小さく笑みが零れる。


「嘉人くんは、優しいね。」

『え?』

「優しすぎて、ちょっと怖い。」


私のことを考えてくれて中々想いを打ち明けてくれなかったことには、彼の優しさを感じる。

でも、もし未来が私に合コンを持ち掛けなかったら?

それを、嘉人くんが知らずにいたら?

きっと、嘉人くんは私に好きだなんて言ってくれなかったと思う。

それが怖いんだ。


「私の前では、自分の気持ちにもう少し素直になってほしい。したいことはしたいって、嫌なことは嫌だって言って欲しいの。嘉人くんが私のことを第一に考えてくれるように、私だって嘉人くんのことを大切にしたいって思うから。……隠さないで、我慢しないで、自分の気持ちだけは。」


嘉人くんの気持ちが見えなくなってしまうことが、一番怖いことだから。

やっと、想いが通じ合えたのに。

やっと、大きな手を掴むことができたのに。

離したくない。