いつもの彼だったら、こんな情熱な言葉、あまり言ってくれない。

だから、嘉人くんが私に抱いてくれていた好意に、今まで全く気付かなかったわけだし。


『…そりゃあ、今…めちゃめちゃ安心してるから。』

「？」

『正直焦った。俺がモタモタしてる間に、みのりに縁談が舞い込んで、一瞬で奪い去られて行きそうで。みのりだって子どもじゃないんだし、合コンなんてものにも行くんだって思ったら……引き止めずにはいられなかったんだ。』


『そういう意味では、みのりの友達には感謝してる。』と苦笑混じりに溢す嘉人くん。

その心の内に秘められていた彼の本音を聞いたとき、また一つ愛しさが生まれる。

でも…ちょっとまだ慣れそうにないなと思った、彼の呼び捨てで呼ぶ私の名前には。


『ゴメン…本当は、怖かったんだ。俺と付き合うことで、みのりにはいっぱい迷惑かけると思う。ただでさえ会う時間も少ないのに、付き合ったりなんてしたらもっと淋しい思いもさせるだろうし、些細なみのりの気持ちの変動にも気付けないことも多いだろうし、デートだって皆が行きたがるようなところには滅多に連れていけないし。』


彼の口から次々と紡がれていくのは、きっと彼がずっと心の内に溜めこんでいたのだろう不安の数々で。

今までずっと、そうやって一人で悩んできたのだろうか。

そうだとしたら…なんて、不器用な人なんだろう。

嘉人くんは優しすぎる。優しすぎて、心が綺麗すぎて…自分をないがしろにしすぎるところがある。