王道恋愛はじめませんか?




私も、好きだ。

嘉人くんの想いより、ずっと、ずっと彼のことを想ってる自信があるくらい、彼のことが好きだ。


――でも。

どうしても、私の中の理性がその想いにブレーキをかけるんだ。


嘉人くんはアイドルで、芸能人だと。

彼のスキャンダルにはなりたくないと。

彼の芸能生活の重荷になりたくないと。

だって、彼はアイドルだから。

恋愛はご法度とされる世界にいる人だから。


――だから、この恋は報われない恋だと。

そう、思って。

思い込んで。

幾度となく喉元を通りかける想いを必死に沈めて、何重にも鍵をかけてきたのに。


「……いいの、かな…。嘉人くんは、アイドルなのに――」

『みのりさん。』


嘉人くんが一歩、こちらに身を寄せた瞬間、2人の距離が近付いて、うるさい心臓の音が更に大きくなる。

控えめに彼を見上げれば、嘉人くんは出会った日と同じ、魅惑の微笑みを浮かべてた。

ああきっと、私はあの時から既に、彼に惹かれていたのかもしれない――と、心のどこかで思う。


『俺が何者かなんて関係ない。みのりさんの気持ちが聞きたいんだ。俺の気持ち、受け入れてくれる?』