『――わぁ…っ!』


都心から離れた港町。

日も沈み始め、港町と沈みゆく夕陽を映すオレンジ色の海が見える、俺だけが知っている穴場スポットに彼女を連れてきた。

車を降り、目の前の景色を眺める彼女の横顔は、いつの日か見た満月を見上げて微笑んでいた彼女の横顔と重なって見える。

でも、あの時よりも確実に、俺の心の奥にある彼女への想いは積もりに積もっていて、一度蓋を外せば一気に零れるほどに成長していた。


『きれー…』


きっと彼女は気付いていない。

目の前の幻想的なオレンジ色よりも彼女の方が、何倍も綺麗だということを。


「……良かった。」

『、』

「みのりさんに、一度は見せたかった場所なんだ。」


彼女のすぐ隣に身を寄せて微笑む俺に、彼女も微笑み返してくれる。

いつもこうやって、穏やかな時間を与えてくれる彼女に、何度癒されただろう。

何度、もう少し一緒に居たいと思っただろうか。