『何だよ、よっちゃん。今は俺がみのりちゃん口説いてんだけど。』
『ふざけるな。俺の友人を無闇に口説くんじゃねーよ。』
『いーじゃん!友人なんでしょ?それに無闇やたらに口説いてんじゃないしね!みのりちゃんはこーんなに可愛いんだし!』
『…あのな、いつも言ってるが――』
私を真ん中に挟んだまま、嘉人くんと神田さんが言い合いを始めてしまった。
内容は私のことから、神田さんのプライベート問題へと移っていく。
『これだから変な噂を流されるんだ。もう少し自分が芸能人だということを自覚したらどうなんだ?』
『よっちゃんは自覚しすぎなんだよ!プライベートくらいいいじゃん、好きにしたって!』
『好きにするにも限度があるだろ。節度を考えろと言ってるんだ。』
『オカンみたいなこと言わないでよね!俺がみのりちゃんと付き合ったって、よっちゃんには関係ないし!ねっ、みのりちゃん?』
「えっ…!?」
いきなり話題が自分のところへ戻ってきて、何も考えずにボーっと聞いていた私は、完全に巡り廻った話の展開についていけない。
私には神田さんに対する気持ちは全くないけど、ここで神田さんの厚意をバッサリ断るのも空気をより一層悪くしてしまいそう。
でも、だからと言って、神田さんの言葉を鵜呑みにすることはできない。
2人の板挟みに合い、困り果てたとき、はぁーっと重い溜め息が左から零れた。
『…ちょっと、手洗い行ってくる。』
そう言って席を立ったのは、嘉人くんだった。
あっけなく個室の扉は閉められ、私は神田さんと2人きりになってしまった。

