『大丈夫よ。』


電話越しから聞こえた声は、想像以上に冷静なものだった。


『完全に傷が癒えたわけじゃないし、立ち直ったわけじゃないけど、ここで立ち止まりたくないって思ったの。このまま恋に臆病になってたら、それこそアイツの思うツボでしょ。』

「未来…。」

『何でみのりが沈んでるの?これでも私、前向きに生きてるんだけど。』


そう言って、軽く笑い飛ばす未来の声を聞いて、私は安堵のため息を小さく溢した。

すべて、私の思い過ごしだった。

想像以上に彼女は強かった。


『…ありがと、みのり。』

「えっ?」


唐突な感謝の言葉に、私は首を傾げる。


『いや…こうやって明るく過ごせてるのって、あの時みのりに一晩中付き合ってもらったからだなって思ったからさ。』

「……。」

『失恋してボロボロになってた時、みのりが傍にいてくれて安心した。一人じゃないんだって、思えたから。――本当にありがとう。』


『みのりは私の最高の親友』だと、あまりにも優しいトーンで未来が言うもんだから、思わず涙腺が緩んでしまう。