ここには、ない…?

え、じゃあ、落としたのは、別の場所ってこと…?

後頭部を重い鈍器で殴られたような、そんな感覚に陥って、固まってしまった私。


「え…っと、それじゃ…あ、別の場所を――」


確かに、私の記憶の中には、いつ、どこであのお守りを落としたのかなんていうはっきりとした記憶はない。

ということは、ここにお守りがなくても、当たり前と言えば当たり前だ。

もしかして、ホールを出てすぐの女子トイレに落としたのだろうか。

だとしたら、早くいかなくちゃ。

タイムリミットの10分を切るまで、時間がない。


そう思って、さっき来た道を引き返そうとしたら、


『――待って。』

「っ!?」


今日、3度目の引き止め。

待って、というのは杉原さんの口癖なのだろうか。

――それとも、私がただ焦りすぎて、先走っているだけ…?