王道恋愛はじめませんか?




初めて流れる重々しい空気に耐えかねていると、嘉人くんの深呼吸が遠くで聞こえた。


『…うん、そいつがさ、会いたがってるんだ。』

「え?」

『みのりさんに。』


一瞬、時間が止まったかのような感覚に襲われる。

え……ええっ?


「え…っと…?」

『ごめん、突然。でも…どうしても、みのりさんに会いたいって言って聞かなくて…、』


嘉人くんから告げられた話は、私の頭の中を真っ白にさせるのには十分すぎて。

単純に、頭が正常に働かない。

私がテレビで拝見する限り、神田さんは愛嬌のある笑顔で人気の弟分アイドルだ。

私より1つか2つ年上だった気がするけど、全然そんな風に見えないくらいに若々しい。


「わ、私は大丈夫だけど…」


嘉人くんは、いいのだろうか。

神田さんが私のことを知っているということは、嘉人くんが私のことを話したとしか考えられない。

彼は、私のことをどんな風に語ったのだろう。

どんな風に、神田さんに話して聞かせたのだろう。


『本当に?無理してない?嫌なら断って良いんだよ。』


電話の奥で、嘉人くんは柔らかな声でそう言ってくれる。

けど、会ってみようと思った。


「大丈夫。今、スケジュールを把握してなくてすぐには言えないから、また連絡するね。」


神田さんに会うことで、ちょっとでも嘉人くんが私をどんな風に見てくれているのか、わかるかもしれないと思ったから。