「ねぇ、嘉人くんはお土産、何が良い?」
『えっ…お土産?』
「うん。」
『そうだなぁ…。』という声で、本気で考えている嘉人くんの顔が浮かぶ。
そんなに真剣に悩むことじゃないのに、そんな些細なことでも真剣に考えてくれる嘉人くんのことを想ってクスリ、と思わず笑っていると、
『んー…みのりさんが選んだものなら何でもいいかな。』
「……!」
不意に聞こえた柔らかな声に、私の心臓はドクンッと激しく音を立てた。
ああ、もう……いつもいつも、嘉人くんには適わないな。
いつだって彼にはドキドキされっぱなしで、魅了させられる。
「…そんなこと言ってると、変なもの買ってきちゃうよ?」
『クスッ…それはそれで、楽しみな気がする。』
そんなこと言いつつ、私がちゃんとしたものを選ぶと分かっているらしい嘉人くんは、電話の奥でクスクスと笑った。
「じゃあ、苦手なものだけ聞いてもいい?」
『んー、そうだなぁ…辛いのは苦手かも。』
どさくさに紛れて彼の苦手なものを聞き出すことに成功した私は、脳内の杉原メモに書き足していく。
「…分かった。辛くないもの、買ってくるね。」
『楽しみにしてる。』と言った嘉人くんの声を聞きながら、私は頬が緩くなっていくのを感じていた。

