『それって、俺達のファン…ってこと?』
そう問いかけた浩介の声は想像以上に低いものだった。
まぁ、普通はそう思うだろうな。
こうやって誤解されることが目に見えていたから言いたくなかったのに。
「…違う。彼女は…友人に誘われてきてたんだ。それで、会場に落とし物をして困ってるところを俺が通りがかって…彼女の落とし物を一緒に探したんだよ。」
細かい部分は割愛しながら、大まかに彼女との出会いをポツリポツリと話し出す。
あの時はまだ、みのりさんのことを知りたいって一心で、こんなに惹かれることになるなんて思いもよらなかった。
いや――…もしかしたら、心の奥底で予感していたのかもしれない。
彼女のことを知った俺が、どうなるのか。
「――それに、彼女は俺を目の前にしても、ミーハーな態度は見せなかった。だから…違う。」
きっとあの時の彼女の頭の中には、目の前にいた芸能人の杉原 嘉人よりも、失くしてしまったあのお守りのことでいっぱいいっぱいだったのだろうけど。
それにしてもあのお守り…随分と古かったような――…
『ふーん…まぁ、よっちゃんがそこまで言うなら、悪い人ではないみたいだね。』
意識がみのりさんに向かっている途中、正面から掛けられた声にハッとする。
人と話してても彼女のことを考えるなんて、浩介に乙女だとからかわれても仕方ないと、心の中で気落ちした。

