王道恋愛はじめませんか?




ズバズバと惜しげもなく核心を突いてくる浩介を前に、俺は逃げたくなる衝動に駆られる。

だって、雰囲気でわかる。

コイツはすでに――最近の俺が少しおかしくなっている原因を、分かっている。


『…――で、誰なの?』

「?」


はぁ、とため息をついたと思ったら、またよく分からない質問を投げかけてくる浩介を見つめる。


『だから、…30超えたオッサンを純情少年に変えた人は誰って聞いてんの。』

「な…っ!?」


恥ずかしげもなく堂々と口にした浩介に、俺は戸惑いを隠せない。

やっとのことで純情少年なんかじゃないと否定するも、そんな赤い顔して何言ってんの?と軽くあしらわれただけだった。

小さな声で、独り言のように、『……最早、少年って言うより乙女じゃん。』とボソッと呟きやがった浩介に、俺は口をパクパクしてしまう。


『…その想い人は、同業の人?』


逃げは許さない、とでも言いたげな浩介の視線にとらわれた俺は、腹をくくるしかない。

ああもう、彼女を秘密にしておくのも潮時か――と心の中で淋しさを覚えつつ、小さく首を振った。