フェアリーサイン




「ゲホッ! ゲホッ! さ、最悪……余計に散らかちゃったよ……」



埃が目や口に入らない様に目を閉じ、腕で口を押さえもう一方の腕で扇ぐ。



舞い上がる埃が落ち着くの見計らいため息を吐く。



何やってるんだろう?


あたし。物に当たったっても意味ないのに。



少し冷静さを取り戻したあたしは、崩れ落ちた本を拾い集める。



とりあえず、適当に済ませて帰ろう。



そう言い聞かせ、あたしはさっき散らかした本を集めた。



「ん? 何これ?」



たくさんの本に紛れ込む様に一つの小さな箱が目についた。



蓋がズレている為、中身が少しだけ見えた。



キラッと何か輝いた。



すごくその中身が気になったあたしは、集めた本を床に置き、その箱に近い付いた。



白くごく普通の紙製の箱。



ズレた蓋を持ち上げ、中身を確認。



「………ん? 鈴?」  


箱の中身は、白い紙に包まれた陶器製の白い鈴。



ほら、メイドとか執事を呼ぶ時に使いそうなあの感じの鈴。



丁寧な作りが施されたその鈴はすごく綺麗であたし好みだった。



ま、使い道はないけどね



でも、よかった。こういった可愛いくて、綺麗な物にはまだ感動できる。



どうやら、あたしまだ腐ってはない。



腐りかけているだけ。