それなのに……。
「一人でこんなの片付けられっかー!」
泣きたくなる。
世間は夏休みだって言うのに。
あたしは何? なにゆえ、貴重な休みを削って掃除をやらなきゃいけないの?
夏の暑さ、蝉の喧しさ、片付けの多さ、苛立ちのボルテージはすでにマックスを通り越えている。
しかも、中学生最後の夏休みがあと二日と八時間半で終わってしまう。
あと、二日で学校が始まってしまう……。
そう思うと、キリっと胃が痛む。
そんな大切な夏休みを奪ったおじいちゃんが申し訳ないけど憎い。
生前、たくさんお世話になった。
初孫という事でおじいちゃんからはたんまりお年玉を貰ったのも覚えている。
ママに内緒でお菓子やオモチャなどを買ってもらったのも覚えている。
きっと年金を削ってくれたのだと思う。
でも、申し訳ないけど……
今は、貴重なバカンスがなくなってしまう事の方が残念でならなかった。
「やってられっか!」
ドカン! と爆発したやり場のない怒りは難しそうな本がぎっちり並んだ本棚に矛先を向けて、思いきり蹴り上げた。
と、その反動で本はバサバサと崩れ落ち、砂埃が舞う。
「キャアー!」
雪崩の様に本が崩れ落ち、あたしの頭に当たる。
イタタタ……、これは、バチですか?



