「あー…ちょっと無理だね……。宿題(しかも、全教科)あるし……」



“悪いねぇ、学生も暇じゃないんだよ……”と赤いソファーに横になると、ママの声のトーンが高くなった。




「ふーん。なら、学生辞める? 周りのみんなが、花の女子高生でオシャレしてる中あんたはフリーターでいいかしら?」

ねぇ? どう? とニッコリ微笑むママ。


「その場合、もちろん食費、ケータイ代、光熱費全部自分で払ってね~。あ、家賃も折半だから」



これは、ママが怒っている時の証拠。笑顔なのに、スッゲー怖い。




その一言、表情、全てに負けたあたし。





「…………行ってきます………」













で、現在(いま)に至るのだ。





「さ、最悪……」



あたしは、目の前に広がる光景に落胆した。



クーラーのない六畳半のこじんまりとした部屋。



すごく暑くてカビ臭い。



埃の溜まった床は革靴を履いてないと足の裏が真っ白になるだろう事間違いない。



現に、あたしが歩いた箇所には、くっきりとした足跡が見られる。



高い天井には至るところに蜘蛛の巣がありヒビの入った窓ガラスから聞こえる蝉の声が暑さと苛立ちを助長する。



「………けど、この量を一人でって……」



呆然と立ち尽くすあたしは、もう一度室内を見渡した。



おじいちゃんはすごく代わり者で悪趣味な雑貨を集めては販売していた。

と言っても客は来るワケがない。



要は、単なるおじいちゃんの道楽部屋なのだ。


そのせいか、やたら物が多い。

西洋風な人形。アンティーク調な椅子。民族チックな打楽器。用途不明なガラクタ。たくさんある。



そして、片付けが下手なのだ。



おじいちゃんもママもあたしも……。壊滅的に。





どうやら、遺伝子上片付けが出来ないのだ。