「待って!!」





廊下を駆け渡るあたしに誰かが呼びかける声が聞こえた。けど、振り向く気になれなくてあたしは、聞こえない振りをして廊下を走る。



「きゃあ!!」


背中から短い叫び声と大きな物音がした。 




さすがに気になって、あたしは息を整えながら足を止め後ろを見た。
そこには、床に手と膝を付けた磯野さんの姿があった。




何も無い所でも転ぶなんてホントにドンくさい。見ててイライラする。いじめる側が単に悪い訳じゃない。いじめられるヤツにも非がある。絶対に。だって、磯野さんを見てて不快な気持ちになるんだもん。



気まぐれに人助けなんかしなきゃよかった……。



廊下の窓から、風が吹き込む。ジメッとした嫌な風。ますます、イライラが募る。違う学年が体育をしている賑やかな声が聞こえてきた。