Heaven~第一章~

ピクリとも動かない。
ピリッとした空気。
さっきまで本当にゲームをしていた奴なのかと思ってしまう。

やっと口を開いたかと思えば私が質問したことは無視して「名前は?」と聞いてくる。

嘘を付くのは簡単だった。
何時も名前を聞いても、その場限りの名前を言っていた。
罪悪感なんてない。
その場限りの関係で、その場を楽しむ事が重要で、呼び方なんてどうでも良かった。
だけど……


「愛川椿」


嘘、偽りない。
正真正銘の名前。

言わず真っすぐ私を見つめる獅朗の瞳が私に嘘をつかせなかった。

私が答えると獅朗の口角が上がり、切れ長の鋭い瞳が優しく弧を描く。