Heaven~第一章~

だけど、そんな呪文を唱えようと変わることがないことは、今の私には分かる。

朝になりベットから起き上がろうとすると、体が軋んで痛い。
その痛みで夕べの出来事が夢ではなかったんだと教えてくれた。

顔を歪めゆっくりベットから起き上がった。
壁に手を付きながらドアを開けた。

「学?」

小さな呼び声に答えはない。

相変わらず優雅に泳ぐ紅尾金龍が居るだけ。

「おはよう、学は?」

話しかけても大きな体を輝かせるだけで、何も教えてはくれない。
夕べの気まずさから学に連絡出来ない。

はぁ……
学、何処に行ったんだろう。

ソファーに深く座り天井を見上げた。

学……

一人には慣れているはずなのに、急に人恋しくなった。
胸の辺りがギュッと締め付けられ熱くなって行くのが分かる。

考えなくちゃいけないことは沢山あるのに、頭がボーっとして上手く働かない。