オフィスの恋愛事情

珍しく、神宮寺さんは、遅れてきた。



きっと、会社で色々引き止められていたんだろう。



「ごめんね、遅れてきて。あ、何かオーダーして」




色気をそこかしこに振りまきながら、神宮寺さんは早口に言った。



仕立てのいいスーツと、育ちのよさそうな、温厚な佇まい。




いつもの癖で、前髪を、耳にかける。



それから、わたしだけに見せる、ちょっと甘えた、個人的な笑顔。





ああ、どうして、私は反芻した。




どうして、この人はこんなに、魅力的なんだろう。




私はただ黙ってそう思った。



そう、酷い振られ方をしたって、全然嫌いになれなかった。