改札を出て、顔を上げると、昔、見慣れていた顔が、前にいることに気が付いた。




「神宮寺さん?」




神宮寺さんは、私の姿に気が付いて、軽く会釈した。それから、私の隣まで歩いてきた。




「久しぶり、山田さん」





別れてからは、お互い苗字呼びをしている。名前を呼ぶ機会自体も、ほとんどないんだけど。




「こんなところで、何をしているんですか?」




「山田さんに、挨拶しておきたくて」




神宮寺さんは、照れ隠しに髪を耳にかけた。




前は良く見た、神宮寺さんの癖だ。