天使が私に落ちてくる



なんなら般若心経でも唱えようかと思っていたら、天使が顔を覗きこんできた。


「大丈夫? 結香ちゃんすごい汗が出てる。顔色も悪いけど気分はどう? 」

「平気。心配されるな」


ついしゃべり方も時代劇がかる。普通にしゃべれない時点でかなりアブナイ。


「ちょっと休んでから乗り物に乗ろう」


あたしの手をつかんだ天使は、乗り物の係りの人に事情を説明して列から離れる。ジェットコースターから一歩離れるごとに、体調がもとに戻っていくのを感じる。


みんなジェットコースターが悪いに違いない。そばにいるだけで、血圧の上昇を招き、心拍数を上げるとは恐ろしい子!


飲み物を買ってくるね、と天使が離れたのはジェットコースターがやっと見えるくらいに離れたベンチだった。

天使がいなくなるとすぐに、優しくしてくれて怒らなかった天使に申し訳なくなってくる。



天使は、ジェットコースターに乗りたかったのに。