「司くんのうちは今年はどうするの? 」

「この前、ヘキセンハウスを作っていたからそのうちブログに上げると思うよ。ボルシチを作ってみたいって言ってたから、今日あたり材料を買い込んでいるだろうね」


レベルが違いすぎる。でも天使ママは、紀伊国屋でしかお目にかかれないような食材ばかりを使う人ではなくて、普通の家庭のご飯を知っている人だ。

だから温かくて優しいご飯ができる。


「そっかーお互いクリスマス楽しみだね」

にこりと笑って告げると、口だけで笑った天使が怖かった。

「ねえ、わかんないの? それとも忘れてるの? 今年のクリスマスは一緒に過ごすんだよ」

「え」

「付き合ってるんだから、当たり前だよ」

言うなり、右手の手袋を取られて、つないだ手をコートのポケットに入れられる。ぎゅっとつないだ手を絡ませるように握り直して、にこっと笑った。


「どこに行くか、結香ちゃんも考えておいてね。僕もいくつか候補をあげておくから」

「……うん」