世界的なN賞を受賞した○北先生が大好きな結香ちゃんは、この話題には食らいついてくる。

話の続きをせがむように、唇が突き出ていて摘まんでしまいたいくらいカワイイ。制服の袖をちょこんとつまんで、引っ張るのもカワイイ。

もう何しててもカワイイ。


「○北先生がね、ゴルフを始めたのは歩いたほうがいいってお医者さまに勧められたらからなんだって」


これは以前、教授なのにゴルフとかちゃらいとぷりぷりしていたから調べてみた。

ゴルフをしている人がみな、ちゃらくてミーハーだとは限らないけれど、何よりも彼女のご機嫌を損ねずいい状態に持っていきたい。


「きっと研究ばかりで無理なさっていたから、お医者さまも心配したんだね」


目がうるうるとしている。自分以外の誰かを思ってうるうるするのは許せないが、○北先生は大の愛妻家でN賞の授賞式にも胸ポケットに亡くなった奥様の写真をしのばせて、「連れてきていますから」と言って結香ちゃんの好感度をマックスまで引き上げていた。


○北先生は結香ちゃんにとって憧れの存在で、その夫婦のありかたさえも憧れなのだ。