「なんで? 」
「好きだから」
「手をつなぐのが? 」
天使の顔が曇る。
「結香ちゃんが好きだからに決まってるでしょ。こんなにわかってもらえてないなんて……」
天使頭を抱える。
「借り物競争の時はお芝居だよね?」
「違うよ。好きだからキスしたんだよ。好きでもない人とキスするわけないでしょ。第一、僕が引いた札は、『好きな人』で結香ちゃんが引いたのが『キス』だよ? あんな人前で結香ちゃんが僕にキスできるわけがないから、代わったんだよ」
「だって初めてじゃないって言った! 」
だから、ノーカウントだって思ってたのに。
「初めてじゃないよ。ファーストキスは保育園でしたじゃない。2回目だよ。そう言えば落ち着くかなって思ってたのに」
「したっけ? 」
「したよ! 藤棚の陰でした! 」