「わざとじゃない」

「大げさにするなよ。模倣犯が出る」


確かにあたしはわざとじゃないけと、天使の辞典借りたさに忘れる女子がでたら大変だ。


「わかってるって」

「まあ心配ないだろーけどさ。あいつは貸さないだろうから」


くいっと親指で天使を指す。

そんなことないだろーけど。

だって、天使は誰にでも優しい。

あたしが悲しくなってしまうのは、そんな時だ。幼なじみだからとはいえ、いい気になるなよと。

わかったわかったと、ひらひら手を振って田崎と別れる。

そんなあたし達を天使がじっと見てたなんて知らずに。