君がくれた夏

 『いらっしゃい!いらっしゃい!』
 『美味しいたこ焼きだよー!』

 お祭りは、神社の鳥居をくぐるのすら困難なくらい人で溢れかえっていた。

「…はぐれんなよ。」
「う、うん…」

人混みをかき分けながら、人通りが少ない所を探す。

「…ここならあまり人がいないな。」
「そ、そうだね!ちょっと休憩しよっか!」

とか言いながら無理やり笑顔を貼り付ける。
 親指の付け根に、鼻緒が擦れて痛かった。

だめだ。ここで、弱音なんて吐いたら…
 せっかく蓮夜が、お祭りに一緒に行ってくれたんだから。我慢しなきゃ。

ヒョイ

「は?えっ!ちょ、ちょっと!おろして!」
「…何いってんのお前。足、痛いんだろ。」
「だ、ダイジョブだから!我慢するからーーーー!」

そうだ。ここで、我慢しなきゃせっかくのお祭りが…

「…いいから。帰るぞ。」
「そ、そんな!まだ何も…」
「…お前の足のほうが大事。黙って背負われてろ。」
「で、でも花火…」
「…だめ。花火は、二人でやればいいだろ。それに…」
「な、なに?」
「…こんな1ミリも似合ってない浴衣姿見せられるひとが、可哀想だ。」
「な、ななななななな…!!!!」