「…ありがとうございます」
伸ばされた手につかまって堤防に登る。
「すごい…」
そこから見る景色は車の中から見たものよりも遥かに綺麗で。
夕日を反射する海を見てると、なぜか無償に懐かしいような気持ちになる。
「好きな人、いたんですね。」
気づけば、無意識のうちにそんなことを口走っていた。
「あっ、いや…今のは特に故意があっていったことじゃなくてっ…
その…興味本意?のようなもので…」
そう弁解してみるけど春斗さんは特に気にする様子もなく
「絶対に叶わないってことはもう分かりきってるんですけどね。」
悲しいくらいいつもの笑顔で笑った。

