まだ何か言いたげな伊藤さんをかわして
事務室から出た。
「おつかれ」
「えっ…」
大きなため息をつきかけて
声の方を見ると、
そこには花井さんが壁にもたれて立っていた。
「花井さん!」
「ごめん、ちょっと話聞いちゃった。永山明らかに困ってたし、止めに入ろうか迷ったんだけどね…逃げちゃった、ごめんね」
そう言って花井さんは困ったように笑った。
「いえ!全然…全然!」
私は顔の前で両手を大きく振ると、
花井さんは私の手首を持って
手を停止させた。
「今日、定時であがれる?」
「は、はい!多分大丈夫だと思います…」
「その後予定とかある?」
「いえ、特には」
「じゃあさ、飯でも行こう。俺の奢りで」
「はい!」
私が勢いよく返事をしたのを確認すると、
花井さんはにっこりと笑って
私の頭の上に掌を乗せた。


