年下男子の誘惑



*



11時になり、


今日は定時であがれることになり、


職員用の裏口を開けると


案の定そこには蓮水くんが立っていた。


「お疲れっす」

「お疲れ様」


いつもの慣れた言葉を交わして


どちらともなく歩き出す。


これが私たちのいつもの帰り道だ。


「ねえ、最近蓮水くんと付き合ってんのかってめっちゃ噂されてんだけど。」

「じゃあいっそ付き合っちゃいます?」

「バカ言わないの。」


蓮水くんはハハっと笑って、


しばらく黙った。


「あのさ、蓮水くんじゃ色気ねーからこれから廉って呼んでくれません?」

「え?」


突然言われたことに驚いて


自然と聞き返してしまった。


「だから、俺のことは廉でいいから。ね?」


1ヶ月もすると、


この敬語とタメ口が混ざった口調も


なぜか少し心地よく感じるようになった。


「…わかった。」


やっと話を飲み込むと、


一気に顔が熱くなるのがわかった。


男の子を名前で呼んだのなんていつぶりだろう。


社会人になってから同僚や先輩後輩は


みんな名字で呼び合っていた。


私は少し緊張しているのがバレないように


小さく息を吐き出した。