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11時になり、
今日は定時であがれることになり、
職員用の裏口を開けると
案の定そこには蓮水くんが立っていた。
「お疲れっす」
「お疲れ様」
いつもの慣れた言葉を交わして
どちらともなく歩き出す。
これが私たちのいつもの帰り道だ。
「ねえ、最近蓮水くんと付き合ってんのかってめっちゃ噂されてんだけど。」
「じゃあいっそ付き合っちゃいます?」
「バカ言わないの。」
蓮水くんはハハっと笑って、
しばらく黙った。
「あのさ、蓮水くんじゃ色気ねーからこれから廉って呼んでくれません?」
「え?」
突然言われたことに驚いて
自然と聞き返してしまった。
「だから、俺のことは廉でいいから。ね?」
1ヶ月もすると、
この敬語とタメ口が混ざった口調も
なぜか少し心地よく感じるようになった。
「…わかった。」
やっと話を飲み込むと、
一気に顔が熱くなるのがわかった。
男の子を名前で呼んだのなんていつぶりだろう。
社会人になってから同僚や先輩後輩は
みんな名字で呼び合っていた。
私は少し緊張しているのがバレないように
小さく息を吐き出した。


