「でもさー、コンシェルジュの伊藤さんいるじゃん?バイトの子と付き合ってんならーって、今ゆきのこと諦めモードらしいよ」

「いや、そもそも私伊藤さんと付き合う気とかないし、蓮水くんと付き合ってないから」


早口に否定して、


食べ終わったお弁当の蓋を閉めて


ごちそうさまでしたと手を合わせた。


チラッと横を見ると


百々子はニヤッと笑った。


「バイトの子、蓮水って言うんだ」


しまった。


墓穴を掘ってしまった。


ゴシップ好きな百々子に名前を知られると


何もなくてもいじられるのは確実だ。


「…そうだよ」


片手で目を覆って


仕方なしに肯定する。


「でも、私伊藤さんより蓮水くんのほうがいい男だって思うよ」


百々子も食べ終えたらしく


割り箸を袋の中に戻した。