Rain Black





「だから、マリアが1年の時話しかけて来てくれて本当に嬉しかった。
『私、結城 茉莉愛って言うの!あなたは?』
たったそれだけのことが、たったその一言が、私には途轍もなく嬉しかった。だから、何があってもマリアにだけは知られたくなかったの。マリアだけは失いたくなかったの……」



私は、瑛梨ちゃんの何を見てきたんだろう。
瑛梨ちゃんの苦しみを、気付いてあげられなかった。

……―――――――――――私だって、瑛梨ちゃんと同じなのに。



「ごめんね、瑛梨ちゃん。気付いてあげられなくて……」
「何でマリアが謝るの?言わなかったあたしが……」
「私が気付いてあげられなかったから……」



私が私を責めることも、瑛梨ちゃんと共に泣くことも違うと思う。
けれど、自然と涙が溢れていた。
2人で、泣きあった。

瑛梨ちゃんの苦しみは痛いぐらいに私にもわかる。
だからこそ、私は瑛梨ちゃんに言った。
『私は離れることはないから。絶対に、ないから』と。

すると、瑛梨ちゃんは『ありがとう』と、今までに見たことがないぐらいの晴れやかな笑顔を見せてくれた。
…瑛梨ちゃん本来の笑顔は、こんなに素敵なものだったんだと私も嬉しくて、笑顔になれた。

……――――そして落ち着いてから、本題に入った。