嘘でも、見間違いでもないのだろう。
…だってそう、断言しているのだから。
ほぼ、確信を持った目だった。
でも、
「……私、知らないの。瑛梨ちゃんから、何も聞いていないの」
私は何も知らない。
瑛梨ちゃんから何も聞いていない。
嘘を言えないし、本当かどうかも分からない。
「……そうなんだ。
でね?あたし、マリアちゃんにしか言わないけどお兄ちゃんがいてね?そのお兄ちゃんは別の所で1人暮らししてるんだけど、暴走族に入ってるの」
「それが、暴走族の中で全国2位の“白虎【びゃっこ】”って言う暴走族なんだけどね?全国1位の“龍王”のライバルなの。だから情報として流したかったんだけど、同じクラスの櫻井さんじゃない?だから、流そうにも流せなくて……」
そう、紗希ちゃんは言った。
確かに、身内の人が暴走族だったら他の暴走族の情報提供してあげたいって思うよね。
きっと、私でもそうだと思うから。
でも、それができなかったのは瑛梨ちゃんのことを考えるから…。
…私は無性に紗希ちゃんに『ありがとう』と言いたくなった。
瑛梨ちゃんを守ってくれて『ありがとう』って。
でも、
「そんなこと、私に言っても良かったの? 私、瑛梨ちゃんと仲いいんだよ?」
私が流したりする、とかって考えなかったのかな。
私なら考えちゃうけど。