Rain Black




瑛梨ちゃんが、レディース?

その言葉を聞いて、私が戸惑いの表情を浮かべていたから、それを見て察したかのように、紗希ちゃんは、『ごめん、やっぱ違うよね』と苦笑いした。



「ホント変なこと聞いてごめんね?マリアちゃん、今の忘れて?」
「ううん。全然良いんだけど、なんで?」
「え?」
「なんで、瑛梨ちゃんがレディースに入ってるって思ったの?」



私はそう聞いた。
レディースというのが、暴走族の女性版ということは私もちゃんと知ってる。
瑛梨ちゃんが、そのレディースに入っているなんて信じられなかったから。

でも紗希ちゃんがこんな嘘をつくような子じゃないってことも、私は知ってる。

だからこそ、私は尋ねた。
すると、少し考える素振りを見せた紗希ちゃん。
そして、覚悟を決めたかのような表情になり、『絶対に言わない?』と私に尋ねる。
それに私は頷くと、



「誰にも、勿論櫻井さんにも絶対に言わないでね」
「勿論」
「約束だからね?」
「うん、約束」



そう言って、ようやく紗希ちゃんは、口を開いた。



「………あたし、見ちゃったの」
「え?」



何を?と問わずともすぐに彼女は口にした。
その内容は、驚くべきものだった。



「…櫻井さんが、
…―――暴走族の“龍王【りゅうおう】”って言うチームの倉庫に入って行くところを」



信じられなかった。

嘘だ、って思った。


あの瑛梨ちゃんが……?


瑛梨ちゃんが、暴走族の倉庫に?