Rain Black




幼い私は何もできないし、絶望しかなかった。


正直 “感情”って言うものも、あまりよく分からなかった。

“楽しい”“幸せ”“苦しい”“辛い”
そんな感情は勿論、

“愛する”とか、
“恋したい”だとか、
“悲しい”って気持ちも、
“怒りたい”って気持ちですら、私にはよくわからない。

だからと言って、知りたいとも思わなかった。


だって、


『私は望まれて生まれてきたわけじゃないから』



私には、一生知らなくて良い感情だと思ってた。


けれど、あなたはそれを真っ向から否定してくれた。



『例え、マリアの両親がお前を望んで生んでなかったとしても、マリアが生まれてきてくれて、俺は感謝する』



その言葉に、氷のように雁字搦めだった私の心は動き始めたの――…。