Rain Black





「…リアちゃん、マリアちゃん!」
「っはい!」
「どうしたの?ボーっとして…」



桂華さんに呼び戻されて、ハッとした。


…何、思い出してるんだろう。
今、これだけ良くしてもらってるじゃない。
何で、過去のあんな嫌な記憶を思い出してるの。

あんな、辛い過去を。

そう思っていれば、『疲れてるのか?』と健志さんが私に聞く。
特別、疲れているわけじゃない。
ちゃんと睡眠もとっているし。

けれど、心配を掛ける訳にはいかないから、



「今日実力テストだから、もしかしたら緊張してるのかな…」




そう言って私は誤魔化した。

でも、強ち間違ってはいない。
進学校で普通科と言うこともあって、実力テストや期末、中間とは別にテストは週に2回ある。



「大丈夫よ!マリアちゃんは“出来る子”なんだから、いつも通りしていればきっとできるわ!」



――……“出来る子”
何気なく言ったその言葉が私の胸にグサリと突き刺さる。