「つか、結愛。おまえ、わかってる?」

 お兄ちゃんは、あたしの顔の横、壁にトン……と、手をついた。

 うわ、これ。

 いわゆる壁ドンっていうやつ!?

 うぅ……情けない。

 初の壁ドンがお兄ちゃんとか、夢がなさすぎ、悲しすぎ。
 
 あまりの切なさにわなわな震える。

「おい聞いてんのか?結愛。俺が寮に戻って原稿落とすってことは、全国、いや、全世界の読者を悲しませることだって言ってんだろ」

「……えっ?」

「これで、もし……。トラウマになって、俺が描けなくなってみろ。おまえ、責任とれるわけ!?」

「……えっ、責任っ!? お兄ちゃんがマンガを描けなくなるかも!?」

「しれないなぁ」

「…………」