それなのに、なんでそんなに勉強が大変で、その上寮生活の学校を選んだのかな~?

 超不思議。めちゃくちゃ疑問。

 そもそもマンガを描く道具だって、お兄ちゃんの仕事部屋に揃ってるし、寮には持って行っていないみたいなんだもん。
 
それから、

「修羅場って言われても……」

 “そんなの、あたしには関係ないじゃん”

 そう言う前に、お兄ちゃんは左の口はしをクイッと上げた。

「珍しいだろ。珍しいよな。大人気で超天才少女マンガ家の葉月センセーが、スランプで、超修羅場とか」

「…………」

 あー、お兄ちゃん、自分で"大人気”とか、"超天才”とか言っちゃってるよ。

 って心の中では思っているけど、そんなことは口には出せない。

 口に出したら最後、恐ろしいことが待っていることがわかっているから。