「なんだかんだ、引っ越してからお家に遊びに行くの初めてだよね」


抱っこしようとしても嫌がる愛永のペースに合わせてゆっくりと歩きながら、
優苗が口にした言葉に相槌を打つ。


「沙衣ちゃんが手料理用意してくれてるみたいだし、楽しみだね」


正直に言うと、楽しみ半分不安半分というところだ。
何度か料理を教えている優苗も、顔に心配の色が浮かんでいる。


「でも初めの頃に比べたらだいぶ上手になったし」


まるで自分に言い聞かせているような様子を見ると、半分だった不安がちょっとだけ増えた。


「まあ最近は真鍋も美味しいって言ってるし大丈夫でしょ」


「うん、多分……あ、まな走らないで!」


歩道とはいえ自転車も通るし、
横断歩道近くだと飛び出しの心配もある。

素直に立ち止まった愛永を、逃さず抱っこした。