「じゃあ、当直なんで…」



仕事を言い訳にそそくさと去って行った優苗に呆れながらも、袋をぶら下げて病室へ戻る。



「おかえり!」



本当に病人か、というくらい大きな声で満面の笑みを浮かべている。

少し体調が良くなったら、すぐ調子にのるところが沙衣の悪いところだ。

……でも、いいところでもある。



「ごめん、桃はなかったからゼリーにした」



テーブルの上に、プリンとゼリーを並べて置いた。



「好きな方食べな」


「んー…ゼリーにする」



袋から、おばちゃんが入れてくれたスプーンを取り出して渡す。

蓋をあけると嬉しそうに食べ出した。



「ねえ、昨日どうして大地じゃなくて優苗のとこ行ったの?」



プリンを食べながら、昨日気になったことを聞いてみた。



「……え?」



聞こえてるはずなのに、聞こえてないふりをする沙衣。

こういうところは相変わらずだ。