「…え?」



「あのほら、あそこだよ大通りの先にある!」



場所を聞いているわけではない。
自分の家の周りくらい俺にもわかる。



「今朝、外出は控えろって言ったよね」



「だから室内プールにしたんだよ」



なに言ってるの、的な調子で言うからもう返す言葉がない。

まあとりあえず倒れたりしたわけではなさそうなので、この話は家に帰ってからすることにした。



「もう寝な、疲れたでしょ」



「んー、けど今日はなんか眠れないからまだいいや」



沙衣は調子が悪いと寝つきが悪いのか、なかなか寝ない。

寝ることが一番大切なのに眠れないのは、なかなか厄介だ。



眠ろうとしていたはずの沙衣を起してしまったことに申し訳なくなる。



「じゃあテレビでも観てて、ソファで休みながら。あ、毛布はちゃんと掛けるんだよ」



「はーい、タケルもお仕事頑張ってねー」



案外あっさり通話は終わり、電子音が耳に響く。