せめて夜が明けるまで



どのくらい泣いただろう。

気づけばもう夜が明けはじめていた。



「あ…朝日が…」

あんなにも暗かった海がきらきらと輝きはじめる。

朝日が昇り、水平線がくっきり見えはじめていた。


こんなに綺麗な朝日を見たのはいつぶりだろう。

一緒に見たかったよ。

「朝日…わたしは朝日の分まで生きるよ。こんなふうに朝日を想って、目を腫らして泣くこともあるかもしれないけれど、朝日は私を見守っていてくれるよね…ねえ、あさひ……」


左手の薬指にはめたピンクゴールドの指輪を握りしめ、私は朝日が昇るのをずっと見つめていた。


涙は止まらなかったけれど、さっきの暗い気持ちは夜明けと共に消えていった。



せめて夜が明けるまで、朝日を想って泣いていてもいいかな。


朝になったら、朝日みたいなあんな笑顔で、真っ直ぐ歩いていくからさ。





END