今朝、アイツが使ったんだろう。

 脱衣場の床がまだ、しっとりと濡れている。


 俺の進入防止にガムテープなんぞ持ち出して。

 来たその日に覗きなんてするか、アホ。

 まあ、カエルのカラダがどんなもんか、多少興味はあるけどな。


 本気で出てったんだろうか。

 いや、シャワーを浴びるくらいだ。

 出てったんじゃなくて、用事があって出かけたのか?

 すぐにでも出ていきたいなら、シャワーなんて浴びる余裕ねぇもんな。


 バイトか?

 あの宝飾店のある駅にでもむかったんだろうか。


「ま、関係ねぇか」


 洗濯機のなかに、脱いだTシャツを入れようとして、ふと傍のバスケットへ視線を向ける。



「……」



 おい…


 なんて無用心なんだ、あのオンナ。


「…普通に置いてくか?」


 ピンク色のブラジャーに、水玉模様のパンツ。


「ガムテープの機転は利くくせに、下着は脱ぎっぱなしかよ」


 まあ、ガムテープを使うこと自体間違ってるとは思うのだか。

 そんなもん貼り付けたって、簡単に開いちまうだろ、ドアなんて。

 湿気というものを知らねぇのか、あのオンナ。


「どんだけ急いでたんだ?」


 キャミソールにいたっては、洗面台のへりに脱ぎ捨ててある。


「ふっ…」



 見ろ!


 …って言ってるようなもんだろ、これ。


「マヌケなオンナ」


 ひとまず先にシャワーを浴びることにして、

 俺は持っていたTシャツをアイツの下着の上に放り込んでから、

 足に張り付いていたジーンズを脱ぎ捨てた。