唯衣の腹筋がぴくりと動くのが分かった。

 目の前の流川の口元も、ヒクヒクと反応している。


 笑いたいんだろ?

 笑えよ。

 オレも笑いたい。

 っていうか、顔はすでに笑っている。


「カエルさん、皆さんの前でだけ動くんですかねぇ…私には全然反応してくれませんねぇ」






「……フ…」

「…ぶっ」


 同時に噴出した流川と唯衣。


「ぶぶぶぶっー!」


 唯衣に至っては、オレを抱えたまま畳の上で転がりだした。


 いで…いででで…

 笑いすぎだ、唯衣。

 オレの頭、細長くなってるし。


 ひとしきり笑い転げた唯衣が座りなおすと。


「カエルさんはお茶飲まれますかねぇ?」


 自分の言葉のせいだとは微塵も思っていない仲居さん。

 真面目な顔つきで、そんなこと言うなって。


 オレがお茶飲むわけねーだろ?

 むしろ飲ませてくださいって感じ。

 飲んでみたいし。

 でも飲めねーし。

 びっしょり濡れるだけだし。


 マジ、カエル。

 いや違う、

 ウケル。


 オレ、この仲居さん、

 気に入った。