「早く戻れよ」


 そんな冷たいこと言わないでよ。


「もう、バカバカバカっ」


 どうしたって伝わらないのよね、この気持ちは。

 辛いのよ。

 恋する気持ちに変わりはないんだから。


「アタシのとこに来ればいいじゃないの」

「まあでも、ここレンタルしちゃったし」

「アタシの部屋はいつでも空いてるのよ、ナオちゃんのために」


 そうよ、無駄に広い部屋で、一人ぼっちで。

 いつでも空いてるのよ、アナタのために。


「空いてるって言われてもなぁ。まあ、今度な、今度」

「今度ってぇ。いっつもそう言って来てくれないじゃないのぉ、ナオちゃん」


 そうよ。

 全然来てくれないじゃない。

 でも…

 ホントにナオちゃんが来たら…

 アタシ、玄関先で食べそうだわ、ナオちゃんのこと。


 そんなことしたら、嫌われるわよね。

 
「店、早く戻ったほうがいいぞ?」


 そんなに帰したいの? アタシのこと。

 はあ…悲しくなってきた。

 店なんて…どうでもいいのよ。


「あの連中、統括できんのは、アンタだけだろ?」

「へ?」


 顔を上げれば、優しく微笑むナオちゃんの顔。


「俺さ、アンタの仕事ぶり好きだよ」

「…ナオちゃん」

「仕事に対する姿勢、アンタの店で教えてもらったしな」


 こ…この子ったら…

 どこまでカッコいいのかしら…


 つけてきたアタシ、ホント、情けない。