ブルルル…


『お待たせしました。××経由、○○行きです。次は、○○町に止まります…』



 先輩と私の待つ停留所にバスがやってきて。


「行こうか」


 立ち上がった先輩が差し出す右手に。


「…はい」


 戸惑いながら、左手を添えて。


「泣き虫なところも変わってないんだな、本条は」


 先輩に手を引かれて乗り込んだバスのなかは、

 あのころと同じ匂いが広がっている。



「先輩… 私…」



 おもいきってメールして良かった。

 少しの勇気で、

 こんな奇跡が起こることもあるんだ。


 恋なんて、できないと思っていたけど…

 できない、じゃなくて。

 自分から行動を起こさなきゃ、ダメなんだね。


 うまくいってもいかなくても。

 後悔するよりは、

 ずっといい。


 
「あの時からずっと…好きでした」



 ガタンっと揺れるバスが走り出す。



 始まった、

 
 私と、


 先輩を乗せて。







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◆スピンオフ
2.仲居さん編「恋、したい」了
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