俺がこの道を通るのは、レンタルビデオ店への行き帰りの時だ。

 自分のアパート周辺には大した店もなく、二つ隣りのこの駅まで通っている。


「あのカエルオンナ…次もまた居たりしてな」


 あまりにも頻繁に見るようになったせいか、

 いつしかこの道を通る時には、数十メートル先からその姿を探すようになってしまっていた。


 肩までの髪に、童顔。

 まあ標準サイズなのかもしれねぇが、その様子から随分ちっこく見えて。

 
「カエルでもピアスなんか欲しがるんだな」


 ふ…

 自分の言葉にややウケる。


 ここ最近の、気になる存在になっているオンナであることは確かだ。

 何というか、滑稽で。


 カワイイとも気に入ったとも違う。

 まあ…

 全体的な雰囲気は、嫌いじゃねぇ。

 むしろ見た目はタイプに近いか。


「この辺のヤツか? いや、電車で帰って行くんだから、バイトか何かか?」


 おそらく、次にここを通るときにも居るだろう。

 同じセリフに、同じ漫才をしながら。


 
「お、やべぇ。早く帰って仕度しねぇと」


 改札へ急ぐ。


 今日も夜のバイトが待っている。



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◆あの日あの時
1.流川編「春先のショーウィンドー」了
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 ※「恋も試合も全力で!」著:栄莉さん

 より裄と浅海ちゃんをチロリとお借りしました。 


 「恋も試合も全力で!」の続3には…

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