駅近くの宝飾店。
「ぶ。また居やがった」
ショーウィンドーに張り付いて、中を凝視するオンナ。
「ううう~やっぱりカワイイなぁ。欲しいなぁ」
視線の先には…
いつものピンク色のピアスだ。
初めて見たときとそっくりそのまま同じ格好で。
カエルか、コイツは。
ショーウィンドーのガラスにべったり張り付いて。
手垢が付くだろうが。
ほら見ろ、中の店員の眉間の皺。
気づかねぇのか、このカエルオンナ。
「ちょっと、もういいでしょ。帰るよ」
「もうちょっと」
「見てたって中から出てくるわけじゃないんだからさ」
「ううう…」
「そんなに欲しいなら買っちゃえばいいじゃん」
「…無理。お金ない。ガスだって止められてんだもん」
「それじゃあきらめな、行くよ」
隣りのデカイほうのオンナが、カエルオンナの腕を引き剥がしにかかっている。
一見、漫才だ。
う~う~唸るオンナをぎゃーぎゃー引っ張るオンナ。
良く見ればコイツら二人ともまともな顔立ちしてるんだが。
アホの組み合わせか。
隣りのちっちぇオンナがこのショーウィンドーに張り付いているのを一等最初に見かけたのは、二週間前だ。
その二週間の間で、三回ほど見かけている。
今日で四回目だ。
…どんだけその石っころが欲しいんだ、コイツ。
二人が去った店先のガラスを覗き込む。
春先ってこともあるんだろうが、やけにピンク色が強いディスプレイだ。
わかんねーな、オンナって。
「一、十、百、千…」
ゼロを数えて呆れてしまう。
こんなもんに金を出すくらいなら、美味い酒でも飲んだほうがマシだと思うのだが。
そこがオンナオトコの違いか。