「唯衣」

「ん?」

「なんか、少し大人になった感じだな」

「え?」

「気のせいかもしれないけど」

「……なに、それ」

「あはは」

「えへへ」


 秋の空が、ゆっくりと色付き始めてる。

 薄紫色の雲が広がって、西の空が淡いオレンジ色に染まっている。


 なんとなく張りつめていた緊張の糸が緩んで、

 私たちは、思いつく限りの思い出話を繰り返した。

 
 2人で思い出を振り返ると、どうしてだろう、なんだか、あったかくなる。

 辛い、というよりも、懐かしい。

 うん、懐かしい。

 そんなに時間は経っていないのに、もう、懐かしい思い出に変わっている。


 時間は、確実に流れていってるんだ。

 楽しいことや、辛いこと、悲しいこと、

 そんな色んな感情と一緒に。


 私たちの思い出話はいつの間にか途切れていて。

 じっと、空に広がる夕焼けを見つめていた。