「少し寒いな」

「うん」

「風邪ひくなよ?」


 そう言って、要くんは自分の着ていたジャケットを私に貸してくれようとする。


「あ、大丈夫。平気だから」

「ホントに?」

「うん」


 要くんは、こんな時でも私のことを先に考えてくれる。

 やっぱり優しい人で。

 ちょっと前までの私なら、
 
 平気でこの優しさに甘えてしまっていた。

 そして、逆に要くんに風邪をひかせてしまったり……。


「要くん」

「うん?」

「いろいろと、ごめんね」

「え?」

「私、要くんにいっぱい我慢させてたよね」

「……」

「自分の気持ちばっかり押しつけて。ホントに、ごめんなさい」


 要くんは黙って私の顔を見ていた。

 少し、不思議そうな表情で。